2020年以降、コロナ禍をきっかけとして多くの企業が在宅ワークを推奨しました。
また顧客への営業スタイルについても、従来の訪問型からオンラインへと移行するなど、これまでのビジネススタイルが変化しています。
このように、ネットを通じたビジネスが拡大すると共に、需要が増加してきているものがネット広告です。
しかしながら、広告主から見るとネット広告の需要増は一時的なものであり、この先も伸び続けるかどうかについては、不安や疑問を持たれている方も多いかもしれません。
結論から申し上げると、ネット広告運用は今後チャンスがあると言えます。
この記事では、なぜネット広告運用にチャンスがあるのかを解説していきます。
ぜひ最後までご覧になっていただき、ネット広告への不安や疑問、課題を解消するお役に立てれば幸いです。
ネット広告運用にチャンスがある3つの理由
はじめに、ネット広告運用についてチャンスがある理由について、下記の2点に分けて解説していきます。
- ネット広告の市場規模が拡大している
- ネット広告費は広告媒体の中で最も多い
早速解説していきます。
ネット広告の市場規模が拡大している
図表1日本の総広告費の推移(データ出典元:株式会社 電通「2021年 日本の広告費」)
上記の画像は、国内の総広告費の推移を表しております。
新型コロナが流行した初年度である20年を除き、広告費は増加傾向にあることがお分かりいただけるかと思います。
その中でも特に、ネット広告費については1997年に調査を開始して以来、継続的に高い成長率を維持しており、21年は前年比121.4%もの成長率を記録しました。
ネット広告の中でもYou Tubeを始めとする映像系広告の需要の高まりは顕著であり、全体の成長に大きく影響を与えています。
また20年のコロナ禍においては、情報をこれまで以上に幅広い年代と多くの人へ、過不足なく伝えるという需要が急増しました。
このような社会的情勢も背景に、ネット広告に限らず、全ての媒体において広告費用は増加している傾向にあるのです。
つまりネット広告についても、全体需要の増加に伴ってこれからさらに拡大していく可能性は大きいと言えるでしょう。
ネット広告費が媒体の中で最も多い
図表2 媒体別広告費<2019年~2021年>(データ出典元:株式会社 電通「2021年 日本の広告費」)
これまでの社会において、広告の中心は以下の4媒体が中心でした。
上記は合わせて「マスコミ四媒体」と呼ばれ、この4つを合計した広告費用は、全広告費における割合のトップを常に占めておりました。
しかし、上記画像である電通の調査レポートによると、21年を皮切りにネット広告が「マスコミ四媒体」の合計を上回っています。
これはネット広告が始めて推定された96年以降初めてのことであり、全広告費の約4割をネット広告が占める状態となっています。
このネット広告の中には、「マスコミ四媒体」のデジタル広告も含まれており、これらも開始以来非常に高い成長率で伸び続けています。
つまり、広告費用の投入先が従来のメディアではなく、ネットへと移行しているということが読み取れます。
この流れはこれからも続くと考えられており、広告費用の中で、ネット広告が占める割合はさらに大きくなっていくでしょう。
ネット広告運用がチャンスとされる未来予測
ネット広告の規模は年々拡大しており、21年には従来のメディアを超えてしまったということをお伝えしました。
ここからは、ネット広告がこれからも伸び続けるという根拠と、未来予測をお伝えします。
内容は以下の3つに分けて解説していきます。
- ネット広告のマスメディア化
- 動画広告が主流になる
- ホワイト広告増加による顧客信頼度の上昇
それぞれ見ていきましょう。
ネット広告のマスメディア化
従来のマスメディアは「マスコミ四媒体」が中心であり、ネット広告はテレビCMのように、大勢に認知させる目的には向かないと考えられていました。
しかし、その構図が徐々に変わりつつあります。
その理由は、ネットにおける動画視聴者数の増加にあります。
これまでは検索履歴から、各ユーザーがすでに認知している商品を訴求するしかできなかったネット広告ですが、You Tube等の動画広告により、潜在顧客に向けた商品の認知にも活用できるようになったのです。
前述した通り、ネット広告の伸長においては映像系広告が大きく貢献しました。
この流れは今後も続くと予想されています。
なぜなら、これまで動画の主流であったテレビを見ない年代が広がっていくからです。
これまでシニア世代はテレビや新聞で情報を得て、若者はネットという図式でしたが、これからの50代、60代についてもネット世代が中心に変遷するのです。
認知が目的の広告はこれまでテレビCMが中心でしたが、どの年代もネットを活用するという状況では、ネット広告の方が優位となります。
全世代がネットを活用できる時代は確実にやってきますので、この先メディアの中心はインターネットとなる可能性は十分にあるのです。
動画広告が主流となる
ネット広告は大きく分けて、以下の3つに分けることができます。
内容は以下の3つに分けて解説していきます。
- 検索広告
- ディスプレイ広告
- 動画広告
2021年時点では、上記3種類の広告の中で動画広告は3番目に位置しています。
しかし、動画広告の伸長率は非常に高く、前年比約134%と大きく増加しています。
そして、サードパーティクッキー廃止や、個人情報の保護を強化する流れもあり、今後はディスプレイ広告や検索広告の数は少なくなっていくかもしれません。
上記の背景から、今後のネット広告の主流は動画広告となると考えられるのです。
また動画配信サービスについても年々充実してきており、You TubeやTVerといったサイトの閲覧者は非常に多くなっています。
動画配信サイトは、それぞれが十分な集客力を持っており、これまでのネット広告の主流であったサードパーティークッキーに依存する必要がなくなっているのです。
さらに次世代通信技術の5Gが進むにつれて、動画視聴の時間はこれまで以上に長くなることは間違いないでしょう。
このような理由から、今後のネット広告は動画広告が主流となっていくでしょう。
ホワイト広告増加による顧客信頼度の上昇
これまで、ネット広告は従来型の広告と比較した時、圧倒的に自由度が高い上に、規制も非常に緩い特徴がありました。
しかし、今後ネット広告の拡大に伴って、テレビCMなどと同様に内容のモラルや良いイメージが求められるようになるでしょう。
どの年代も目にする広告になるのですから、常識的な範囲をあまりにも逸脱した内容は許されなくなっていきます。
こうしたホワイト広告が増加することで、ネット広告に対する顧客の信頼度もこれまで以上に高いものとなるはずです。
過去にはヤフーが20年度に、約1億7千万件の広告素材を非承認にした例や、You Tubeもポリシー違反の広告に対する取り組みなどもおこなっております。
このような規制強化が進められるにつれ、グレーな内容の広告が淘汰されることは明らかでしょう。
結果として広告の印象も良くなり、ネット広告への信頼度も上昇していくと考えられます。
【2022年】ネット広告運用の課題点
ここまではネット広告の良い点、これから伸びていく根拠を解説してきました。
それでは、ネット広告に課題点はないのでしょうか?
現時点に至るまで、急激に伸長したネット広告ですので当然、これから運用するにあたっての課題点は複数あります。
こちらではそんなネット広告運用の課題点について、以下の3点を解説します。
- 広告の品質課題
- アドフラウドに関する課題
- ネットリテラシーの低さ
それぞれ見ていきましょう。
広告の品質課題
ホワイト広告が増加するという解説もしましたが、現状ではまだまだネット広告の品質については問題視されている部分もあります。
その原因の1つは、参入者が増えたということです。
従来のメディアでは広告代理店に内容を委託し、広告を掲載することが一般的でしたが、ネット広告では代理店を必要とせず、だれでも広告を掲載できます。
その仕組み自体は素晴らしいものなのですが、悪質な広告もその分増えてしまうのです。
品質の悪い広告の例は、以下のようなものがあります。
- スマホゲームの内容と乖離している
- 短時間で何度も広告が表示される
- 非常に質の低い動画広告(使いまわしのマンガアニメ等)
- アフィリエイト系の怪しい広告
- 異性にモテるなどの胡散臭い広告
こういったネット広告でも審査に通ってしまう点は、今後の課題としてあげられるでしょう。
アドフラウドに関する課題
アドフラウドとは、簡単に言えば「ネット広告上における不正行為」という意味です。
詐欺的な不正行為や、自動プログラムを悪用した不正なインプレッションの増加、広告クリック数のかさ増しなどの手口があります。
上記のようなアドフラウドは、本来ターゲットである人ではなく、ロボット相手に広告が表示されることになります。
つまり、広告費用が無駄になってしまうということです。
日本国内において、このアドフラウドの被害総額は数億円〜数十億円にまでのぼると考えられていますが、残念ながらまだ法整備がされておらず、立件や逮捕という事例は一度もありません。
法整備を待たずして、現在ではアドフラウドへの対策が続々と実施されています。
排除ツールの配布をおこなうなど、世間にも少しずつ認知されています。
今後ネット広告の効果を向上させるために、アドフラウドへの対策は今後必須となるでしょう。
ネットリテラシーの低さ
ネット広告が有する課題として、ネットリテラシーの低さもあげられます。
リテラシーとは本来、「読み書きの能力」といったニュアンスを指す言葉ですが、現在では「情報を理解して、活用する」などといったイメージで使用されることが多くなっています。
つまりネットリテラシーとは「インターネットの情報等を正しく理解して、判断や活用する力」という意味になるでしょう。
ネットリテラシーはインターネットを使用する全てのユーザーに求められますが、残念ながら悪質なユーザーも一定数存在しています。
そしてネット広告では、クリック率を高めることを追求するがゆえに、過激で差別的な広告を出すことなどが問題となってしまいます。
このような問題は、法に触れていなければ大丈夫と考える人もいますが、当然それは間違いです。
その広告で傷つく人がいることはもちろん、あまりにも悪質な行動は、今後のネットの成長速度を鈍化させてしまいます。
過激な広告は、一時的には利益を獲得できるかもしれませんが、長期的に見れば当然クリーンな広告の方が全ての面で勝るでしょう。
このようなネットリテラシーの低いユーザーや広告を、いかにして排除していくかもこれからの課題として残っています。
【まとめ】ネット広告運用はこれからがチャンス
本記事の内容をまとめます。
ネット広告には今後大きく伸長することが見込まれ、チャンスがあります。
その理由は以下の2つがあげられます。
- ネット広告の市場規模が拡大している
- ネット広告費は広告媒体の中で最も多い
コロナ禍の影響もあり、ネット広告は動画を中心に大きく伸長しました。
その結果、21年度の広告費用においてネット広告は初めて「マスコミ四媒体」とよばれる新聞、雑誌、ラジオ、テレビの合計を抜き、全広告費用の中でトップの割合を占めるようになりました。
この流れはこれからも伸び続けると考えられており、従来のマスメディアをネット広告が塗り替えるでしょう。
その理由はネットを日常的に扱う世代の増加にあります。
テレビから情報を得るのではなく、ネットから情報を得る世代が全世代に広がっていきます。
そうした流れもあり、ネット広告はクリーンな内容も増えてゆき、顧客の信頼度も上昇していくでしょう。
しかしながら、まだまだ発展途上のネット広告ですので、課題点も複数存在しています。
低品質な広告やプログラムの悪用、一部ユーザーによる過激な広告等にどう対処するかも検討しなければいけません。
このような課題も抱えているネット広告ですが、これから益々発展していくことは間違いないと考えられています。
5Gの普及による動画視聴の増加や、法整備が進む可能性などを考慮すれば、ネット広告運用はこれから多くのチャンスを提供してくれるでしょう。